インプラント治療は、素晴らしい治療法と思いますが、いろいろ困難な症例にも巡りあいます。
左の写真はご覧のように、わざと角度を付けて埋入しています。
理由は上顎の骨の上の骨の厚みが少なくて、そのままでは上顎洞(じょうがくどう・蓄膿症の時に脳がたまる空洞)といわれるところに突き破ってしまうからです。骨を増やす手術法もありますが、患者さんがそれをのぞまないこともあります。そう言う場合は左の写真の様な方法で埋入して、角度の付いた土台を装着して歯を作っていきます。
左下の4.5番の歯は根の中が汚れて、4番は根の先に膿の袋が出来ていたので、根管治療をしました。左上の写真では膿の袋が吸収されて治ってきているのがわかると思います。
以下では、またいろいろなインプラントをご紹介いたします。

上左右の角度の付いたインプラントは、前ページでご紹介しました、Otiタイプです。歯と歯の間では、アゴの骨が薄く吸収してしまっていて、埋め込むことが出来ないので、骨の厚みがある奥の歯の方向に沿って、埋入して土台部分の方向を変えたのです。

左写真は上の前歯の部分です。、埋入の方向に制限がありました。骨と結合後角度の付いた土台を取り付ける前の、ドライバーの角度の違いで、その方向の違いがわかるかと思います。
とは言え、左の写真ですが、これは天然歯の例ですが、根の神経を取った後の治療の写真です。
隣りあった天然の歯でもこれだけ、角度の違いがあることがわかります。
インプラントの埋入方向に違いが出来るのは、至極当然のこととも言えます。
インプラントを埋入するに当たって骨を増やしたりする治療の必要性が必要以上に強調されることがありますが、あまり好ましくないと、私は思っています。

この方は上の歯は全部あるのに、下顎は6本失って取り外しの入れ歯を入れていたのですが、入れ歯から解放されたいと来院されました。失った本数分のインプラントをご希望になりました。下顎のアゴの骨の厚みも高さも十分でしたが、上顎の歯とのスペースが少なく、インプラントの上にかぶせる歯の高さがとれなくて苦労しましたが、無事治療を完了し、知人の方も紹介くださりました。

この方は、以前に他院で数100万治療費をかけられた方です。素晴らしい歯と入れ歯が入っておりました。右上と左下は歯がなく欠損状態で、インプラント治療を希望し来院されました。下アゴの歯は前歯から右側(向かって)の歯はそのまま残すことが可能と思われましたが、上のブリッジは11本と長いもの、で土台になっている御自分の根は8本です。ところが、その8本がほとんど残すことが不可能と思われ、私も悩みましたが、患者さんにご説明して、同意を得て、11本全部をまずは仮歯に置き換えました。今まで使われている入れ歯もそのまま使えるように配慮しています。
その後、上4本、下2本のインプラントを埋入、3ヶ月を待って下のインプラントに仮歯を入れ、上と咬めるようにしました。
治療方針としては、4ヶ月経って上顎の4本に土台を装着して、その4本に仮歯の保持の力を負担するようにして、次のステップとしてグラグラの歯を抜いて、そこにインプラントを追加埋入して、その歯が骨と結合したら土台を装着、上顎14本繋がったブリッジを作製するというものです。
はじめにだめな歯を抜いてしまって、大きな入れ歯を入れて頂き、噛み合わせを保ちながら必要数インプラントを埋入するという方法を、普通はとりたいところですが、今までの患者さんの食生活を大きく変えないで、食事をしていただきながら治していくために、このような方法をとりました。
最終的に治療が完了したときのX線写真(2008年12月)です。
仮歯で咬めるような状態を作って、数回に分けてインプラントを埋入しましたわけですが、骨と着かなかったり、何度も何度も仮歯が壊れたりで、丸2年以上に及ぶ治療となりました。
残すことが出来た歯は神経を取ったあとの治療をやり直したり、歯周病の治療をしたりして、保存に努めました。
左上の3本は歯周病が進んだ状態だったので、少々不安を残してはいるものの、何でも良く咬める理想的なかみ合わせを、取り外しの入れ歯無しで獲得することができました。
根気よく通院を続けてくださった○○さんに感謝です。
今後はこの状態で長期間にわたり使っていただけるように、歯科衛生士と協力してメンテナンスで頑張っていきたいと思っています。

左上写真は、初診時のもの。右上は治療完了時の写真です。美しい口元なったと思いませんか?
下アゴは11本の歯を失い、3本の歯しか残っていませんでした。しかも残っている歯もむし歯で入れ歯を支えるバネ(クラスプ)も合っていない状態です。
上アゴは歯はほとんどあるもの、むし歯になっていたり、元々、左右の2番の歯が矮小歯と小さな歯でしたし、真中は隙間がありました。
上下のバランスをみても、前歯が1.2番より3番以降に垂れ下がった状態で、お口を大きく開けて笑うことが出来ない様な状態です。
この方もインプラントを希望の方でしたが、残っていた3本も、入れ歯のバネの力で負担になってあまりいい状態ではありませんでした。そこでいろいろお話しを伺って治療方法を検討しまし、4本のインプラントを埋入して、そこに磁石で吸い付くタイプの方法をとることにしました。
左上は計画、右上、左下は埋入手術直後の写真です。(これも無剥離で埋入しています。)
骨と結合する期間、3ヶ月の間に、短く小さい前歯を、充填法といわれる、白い材料を使って長さや大きさを整えたり、奥歯のむし歯を治して、全体のバランスをすこしずつ整えていきました。下の3本もむし歯がありましたので、入れ替えて連続した強固なものに変えました。
右下に光っている4本は入れ歯の磁石を吸い付けるための金属のキャップです。
磁石で吸い付く入れ歯を入れた、治療完了一歩前の写真です。下の前歯の2本は仮歯で1本は未治療なのがわかります。上左右の前歯1番には伸ばした分との境目にスジが見えますが、2番は充填したとはわからないと思います。3番以降もバランスが整い、初診時と比べると別人の口元になりました。
患者さんにも大変喜んでいただき、私もうれしくて、大きく印刷して何度も見返していました。やりがいのある治療でした。