この方は、自律神経失調症で体調が悪く救急車で病院に運ばれたりしていた50歳くらいの女性の方です。
体調が悪いため、笑顔があまり見られない方でした。結婚式の写真をみてもすでに顔が変型しているとの事です。先の症例のようにいろいろ検査をしていきましたが、かなり難しい症例でした。というのは、長年の間に右咬みと左咬みとかわっていたと推測できたことです。ふつうの症例でしたらそんなことはあまりありませんが、これが解ったことで、治療が一気に進みました。噛み合わせを徐々に整えていきましたら完全とは言えませんが不調は遠のいていきました。頭蓋骨の変形までかなり改善されてきました。街で会っても笑顔で、、という感じ。明らかに周りの目から見ても変わりました。

この方は具合が悪くて日常生活が出来ない「歯医者さんに行くたびにだんだんと体の調子が悪くなっていきます。何とか助けて下さい」とこういう方でした。下の写真を見ていただければわかると思いますが、上顎は比較的地面に対して水平という感じです。どちらかと言うとこの方は下顎が変位しているわけです。特に奥歯が低い。入れ歯の高さが前歯より段下がりになっています。そこで楽になる位置に誘導してあげる。右の写真の通りです。こんなに低いわけです。この状態を保つことが出来るスプリントを入れてあげると、翌々週から子供を登山に連れていきアルバイトも始めまられました。「助けて下さい」と言っていた人がです。噛み合わせは怖いです。このケースは歯科医原性であり、また、自己原性とも言えると思います。「痛いところだけ」とか「咬めるからここだけ治して下さい」とかしていると、だんだんと知らず知らずのうちに顎がずれていってしまい、何かのきっかけで発症してしまいます。
ただし、誰もがなるわけではありません。でも、咬合は恐いですね。

これは小学生高学年の方です。別段自覚症状はありませんが、明らかに覇気がありません。写真の黒●の歯の噛み合わせが上下反対のため、下顎が大きく左にずれてしまっています。明らかに姿勢もねじれています。
これも歯の生え換わりの時期の親の責任と言えると思います。今症状が出なくても思春期あたりに一気に身体の不調を訴える原因になることが多いような気がします。

この3ページで私が言いたかったことを要約してみます。
まず一つは長年の咬み癖によって、堅いはずの不動のはずの頭蓋骨まで変形してしまうという点です。二番目に、その場限りの治療だけで放置しておくと動かないはずの歯が動いてきてしまいます。それによって体全体にひずみが出て、不快な、時によっては精神病扱いされる症状までをももたらすこともあると言うことです。歯科医にも患者さん自身にも両方に責任があります。
 かみ合わせ治療の第一人者であられる、続 肇彦先生はその著書の中で、続先生の医院に来られる患者さんで(数々の不定愁訴を訴えられて精神科までたらい回しにされた患者さんたち)本当にこの人はおかしい。精神科の適応症と思った人はほとんどいなかった。また、本当に抗うつ剤が必要な患者さんもほとんどいなかった。というような記述をされています。
 三番目に咬み癖にや歯並びの悪さは若い、いや、幼少時から出来上がってしまうと言うことです。ですから、頬杖をついたり、偏側咬み、それに先に書いたようなただ一本の歯並びが悪いような例は、迷わず習慣の是正、治療を親がしてあげるのが義務だということです。確かに矯正治療は保険がきかないため躊躇しがちです。がしかし、大がかりな矯正ではないため、べらぼうにお金がかかることはないはずです。ただの一本の反対咬合が体全体をねじ曲げて成長させてしまうのです。それを考えたらここで治しておくのに数万円かかっても、これは安すぎる選択だとも言えます。保護者、そして学校の先生もこのことには気を使っていただきたいと先にも述べたように学校検診の際、近年いつも思っています。みな自分の健康は自分で防衛するしかないのです。それを手助けするのが、医師・歯科医師・その他いろいろな療法の実践者であると思っていただきたいと思います。
米国その他の国には骨の変異の矯正の専門家としてカイロプラクティックの大学が、また、オステオパシーという分野の大学が、医学部と同じ修業年数で存在しています。これらが万能とは言いませんが、いわゆる西洋医学一辺倒の考え方に方向修正する時期が日本に来ていると感じざるをえません。民間でいろいろな医学として認知されていない療法が数多くありますが、良く吟味してみると素晴らしいものが数多くあることに気がつきます。日本人の病院信仰は異常です。(1999.04.19)(1999/12/31・修正)
(2002/03/24 ページリニューアル)